まあニコ動ユーザーなんて普通にめちゃめちゃアクティブですよ

ちょっと無駄に長いエントリになってしまいました。

ニコ動を支えていたのはコメント機能でも違法動画でもない……?

ニコ動を支えていたのはコメント機能でも違法動画でもない
http://d.hatena.ne.jp/nishink/20080724

 上記エントリで指摘の通り、マイリストランキングは、ニコニコ動画のもっとも面白いもののひとつです。単純に考えて、マイリストランキングは、はてなホッテントリと同じ。基本はSBM。
 ですので、上記のエントリにおける主張が持つ感覚には、基本的には同意します。
 ただ、もうすこし整理して考えられるのではないかと思いました。コメント機能は一面的な見方で見下されるべきではないです。あと、違法動画によってニコニコ動画の土壌が形成されたこともまた事実。これを踏まえて、自分なりに、このニコニコ動画にまつわる価値を整理してみることにしました。

ニコニコ動画を支えている価値の重心は常に変化してきた

 上記エントリの大きな瑕疵のひとつは、ニコニコ動画における価値の重心、その移動を無視してしまっていることです。
 まあ、無視しているというのは言い過ぎで、記述者本人としては単に省略しているだけなのでしょうが、ブクマで色々とコメントが気になりましたので、その点を整理してみたいと思います。

 まず違法動画。言い換えると、権利侵害コンテンツ。これは、ニコニコ動画を確実に支える一因であったと思います。特に黎明期においては(残念ながら僕はそのころのニコニコ動画を知らないのですが)、豊かな独自コンテンツを生成するにいたるまでのその土壌として、権利侵害コンテンツは明らかに重要な機能を果たしました。ただし、ニコニコ動画が成長するに従い、その成長にとって権利侵害コンテンツの価値は「相対的に」低下していった、と判断することが出来ます。権利侵害コンテンツがニコニコ動画を支えて「いた」ことは確実です。そしてまだいまも、黎明期ほどではないながらニコニコ動画を確実に支えています。

 次に、コメント機能。しばしば擬似同期的と表現される、この「動画のタイムライン上にコメントを書き込める」コメント機能は、やはりこれもニコニコ動画を確実に支える一因であったし、今でもそうだと思います。しかしコメントの「書き込み」機能については、相対的にみて、価値の下がってきている機能であるといえるでしょう。この機能を抱える後発のサービスが次々と誕生したためです。いまや、コメント機能そのものはニコニコ動画のみが持ちうる独自の機能と言うことはできません。コメント機能そのものの絶対的な価値は下がっていませんが、相対的に見るとその機能自体の価値は低下しているのです。ただし、それはあくまで「書き込み」についての面。それはあとで触れるとして……

 上記の二点「のみ」を踏まえると、コメント機能を備えた後発のサービスや、削除要請を受けることの少ない海外系動画共有サービスが、ニコニコ動画と同様に、あるいはそれ以上にユーザーの欲求に応えられる、ということになってしまいます。しかし、それは勿論違います。後発のサービスや、海外系のサービスは、日本においてはただそれだけではニコニコ動画には勝てません。

 それはニコニコ動画がハブメディアとしての価値、つまり、豊富なユニークコンテンツと圧倒的なアクティブユーザー数を獲得することに成功してきたからに他なりません。これは、上記エントリで評価されている、マイリスト機能が有する価値でもあります。

例えば、zoomeとニコニコ動画を比較してみる

 zoomeにはニコニコ動画から転載された動画がいくつも存在します。また、マイリストに対応してマイクリップという機能があり、そのランキングも実装しています。*1
 しかし見てみれば分かるように、両者の動画コメントおよびランキングの面白さ、この違いは歴然です。
 その差は、それぞれ「その動画に新しいコメントが集まっているかどうか」「そのランキングで新しい人気が分かるか」にあります。
 先ほども述べましたが、ニコニコ動画とzoomeのコメントシステムは「擬似同期的」としばしば表現されます。後からやってきたユーザーが、先に視聴したユーザーが残したコメントを擬似的なリアルタイム感覚で楽しめるようになっているのです。その点では、ニコニコ動画とzoomeには差はありません。むしろ、その点だけで論じるならコメントの装飾機能が充実しているzoomeのほうがより楽しめ、充実しているとさえ言えます。
 ただ、重要なのは、擬似同期の楽しさは、真性同期の楽しさに勝てない、ということです。
 両者におけるコメントをつけにくるアクティブユーザー数の差は圧倒的です。
 ニコニコ動画における人気の動画では、zoomeにおける人気の動画よりも、より真性同期的な*2空間の共有が出来るのです。*3
 また、ランキングでもその圧倒的なマイリストユーザー数の違いから、「いま」(ないしは今日)多くのユーザーが支持している動画が分かるようになっています。
 これは「ニュース性」と言い換えることもできる、真性同期の楽しさです。

 ユーザーがリアルタイムで集まっていない動画では、コメントを擬似同期的に楽しむことができます。この点ではzoomeもニコニコ動画も同じです。ただし、ニコニコ動画には、それに加えてリアルタイムでコメントを楽しめる動画がいくつもああります。定期的にリアルタイムな人気によって変動する旬のランキングがあります。
 そして、その真性同期を支えているのは、コメントやマイリストにおける、その圧倒的なユーザー母体数の差です。

機能としてのコメント(to write)よりも、コメントそのものの質・量(to watch)がニコニコの財産

 ユーザー数の2割がコメント機能のアクティブユーザーだと元エントリでは説明していますが、この数字を基にすると、あくまでコメント「書き込み」機能を必要とするユーザー数の割合しか割り出されません。
 ブコメでも指摘されていますが、コメント機能は「書く」ユーザーよりも「見る」ユーザーのほうが圧倒的に多いです。
 そしてニコニコ動画の人気そのものを考えるのなら、重要なのは「見る」ユーザー。再生数。
 つまり、ニコニコ動画の人気においてコメントの重要性を論じるならば、書き込み機能のユーザー数よりも、見るコンテンツとしてのコメントそのものを必要としているユーザー数の割合を求めるべきなのです。まあ、もしそれを求めるならば、再生数に対する「コメントを表示した状態での視聴再生数」を計算しなくてはなりませんので、「データないです><」というオチになりますけれども。

 ただ、たぶんどんなに少なく見積もっても7割は越えてるでしょう、というのが僕の見解です。
 つーか計算なんかしなくても、ニコニコのユーザーなんてどう考えてもめちゃめちゃアクティブなほうでしょjk
 見てたらそれは明らかに感じられるし、それに2割って普通にでかい

結論

  • 「ニコ動を支えていたのはコメント機能でも違法動画でもない」と言うのはちょっと乱暴だよね!
  • 違法動画みたい人ばっかりなら他のサービスにざくざく人が流れるはずだけど、そうでもないねー
  • コメントシステムには、二つの側面があって、書く機能としてのコメントの価値は今となってはユニークなものじゃないかも。
  • だけど、読むコンテンツとしてのコメントの集積はニコニコ動画の圧倒的な強みじゃない? 日本語のコメント集積の価値を考えたらその点ではようつべにも負けない
  • 圧倒的なユーザー数が支えるコメントやランキングでの「リアルタイムな盛り上がり」がすごいよ
  • ところでドイツスペイン進出は正解だと思うよ。あとイタリアも欲しい
  • マイリストランキングが持つ価値は、ニコニコ動画における重要な要素だけど、その重要性を強調するためにコメント機能そのものや、権利侵害動画が、ニコニコ動画を未だ支えている大きな因子である現状を否定してしまうのは、なんかなー
  • マイリストランキングの面白さはSBMの面白さと同じ構造だってことは常識だと思ってたよ
  • zoomeスペック弱すぎ。どうやって勝ち上がるつもりなのかなー
  • ニコニコモンズにwktk
  • UIの話はまた今度
  • ランキングを面白くするには……! という話もまた今度
  • なんか読みにくいね俺の文章

 参考エントリ:ハブメディアっていう言葉はもっと広まっていい
 http://d.hatena.ne.jp/masahiro86/20080613/1213402336

*1:これはひどい

*2:擬似的ではないリアルタイム的な

*3:読みづらいので書き直しました